展着剤の使い分けと目的に応じた使い方!おすすめの展着剤一覧

葉や害虫の表面は、薬剤がつきやすいものもあれば弾かれやすいものもあります。農薬を効かせるには、薬液を均一に付着させることが大切です。そのサポートをするのが展着剤。
展着剤には農薬を作物にしっかり付着させたり、除草剤の効果を高めたりすることで、農薬の効果をより安定させる働きがあります。
展着剤の種類
展着剤には大きく分けて下記の種類があり、それぞれ以下のような特長があります。
- 一般展着剤
- 機能性展着剤
- 固着性展着剤
一般展着剤(スプレッダー)
濡れて広がる性質を高めることによって、作物の表面を薬液でムラなく均一に覆ってくれます。
例)アグラー、マイリノー など
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機能性展着剤(アジュバント)
薬液をムラなく広げる性質と病害虫や作物の表面から内部へと染みこむ性質をもっています。(薬液を植物体内に入りやすくさせます。)
例)アプローチBI、スカッシュ、ブレイクスルー、ミックスパワー、ワイドコートなど
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さらにこの機能性展着剤(アジュバント)には殺虫剤や殺菌剤などに広く使用できるタイプと除草剤に添加する、除草剤専用展着剤があります。
◎除草剤専用展着剤 例)サーファクタントWK、サーファクタント30、クサリノーなど
固着性展着剤(スチッカー)
植物体の表面にワックス層をつくって薬剤を固着させる作用があります。
- パラフィン系展着剤(アビオンE、ペタンVなど)
- ポリオキシエチレン樹脂酸エステル系展着剤(KKステッカーなど)
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パラフィン系展着剤は、植物の表面にワックス層を作って薬剤を固着させる作用があります。梅雨期間中の長雨や大雨に備える場合におすすめです。
展着剤の使用にあたっての注意点
展着剤の種類によっては作物や農薬の種類、さらには気温などの気象条件によって、添加することで薬害の原因になる可能性があります。使用前には必ず製品ラベルを確認し、適切な条件で使用しましょう。
また、展着剤は必ずしも添加すれば農薬の効果が上がる、安定するというわけではありません。展着剤の種類によっては薬剤の付着量がかえって減少し、残効が短くなる場合があります。実際に、病害の種類によっては展着剤を添加しない方が防除効果が安定していたという試験データも報告されています。
一方で、展着剤は作物の栽培状況や農薬と病害虫の組み合わせ次第では、防除効果を高める例も多くあります。そのため、まずは「何のために展着剤を使うのか」という使用目的を明確にし、活用することが大切です。
展着剤の使い分け

展着剤を使用する際は何のために使うのかという目的を明確にし、目的に合ったタイプを選びましょう。
展着剤には多くの種類があり、それぞれに異なる性質があります。種類によっては使用できない作物や適さない殺虫剤・殺菌剤がありますのでご注意ください。
以下に示す使い分けは一部の例にすぎません。カテゴリ分けされていない商品でも、性質としては各タイプに該当するものがあります。多数の製品が存在するため、本情報はあくまで参考として捉え、実際の使用時は製品ラベルやメーカー情報を必ずご確認ください。
【比較的安価で濡れにくい作物に使用したい】
| 展着剤 | 備考 |
|---|---|
| アグラーなど | ほとんどの農薬に混用でき、薬液がつきにくい麦、ねぎ、キャベツなどにもムラなく付着させます。 |
【除草剤の効果を高めたい】
| 展着剤 | 備考 |
|---|---|
| サーファクタント30、サーファクタントWKなど | 茎葉から積極的に吸収させて、接触効果を高めます。 |
【耐雨性を高めたい】
| 展着剤 | 備考 |
|---|---|
| アビオンE、ペタンVなど | 梅雨時期や長雨や大雨に備えたいときにおすすめです。 |
【早く拡げて乾きを早くする】
| 展着剤 | 備考 |
|---|---|
| ドライバー、ササラなど | 濡れ広がると同時に薬剤散布後の乾きが早いという特長があります。 |
【薬液の汚れを軽減したい】
| 展着剤 | 備考 |
|---|---|
| まくぴか、ブレイクスルー など | 薬液が均一に早く拡がるので、水和剤や高濃度で散布するフロアブル剤などを使用しても、農薬による汚れが目立たなくなります。 |
【薬液を作物の隙間にも濡れ広げたい】
| 展着剤 | 備考 |
|---|---|
| ドライバー、ブレイクスルー など | 薬液の届きづらいすき間にも入り込みます。 |
スカッシュとアプローチBIの違いは?
【殺虫剤や殺ダニ剤の効果を安定させる】
| 展着剤 | 備考 |
|---|---|
| スカッシュ | 農薬の粒子をあまり細かくしない代わりにクチクラワックスを軟化し、なじみながら浸透していく。付着効果と濡れ性が高まる。 殺虫剤中心(マシン油に近い)農薬に混ぜると農薬を溶かし込んだ油滴を作る性質があるので、この油滴がダニやアブラムシなどの体の表面に薄い膜を作って気門をふせぎます。 |
【殺虫剤や殺菌剤の効果を高め安定させる】
| 展着剤 | 備考 |
|---|---|
| アプローチBI | 植物がすみやかに取り込めるように可溶化能です。その優れた可溶化能により、農薬成分を作物体内に浸透させ、効果を高め安定させます。 主な用途として、殺菌剤、植物成長調節剤への加用などがあります。 |
※組み合わせる農薬によっては薬害が発生するおそれがあります。ご使用の際は、登録内容を含む詳細情報を製品ラベルおよびメーカー公式サイトで必ずご確認ください。
農薬が付着しにくい作物がある?作物の濡れ性と展着剤

作物ごとに薬液が付着しやすいものと付着しにくいものがあり、その性質は防除効果にも影響します。特にネギやサトイモのように葉面の濡れ性が悪い作物では、散布した薬液が弾かれやすく、十分な付着が得られない場合があります。
そのような作物に対しては、薬液の濡れを改善し付着性を高める展着剤が有効です。薬剤が作物表面に均一に広がりやすくなり、防除効果の安定が期待できます。
| 濡れの程度 | 作物 |
|---|---|
| 悪い | イネ・ムギ・ネギ・だいず・キャベツ・サトイモなど |
| 中程度 | ブドウ・イチゴ・メロン・ナス・トマトなど |
| 中~良い | カキ・サツマイモなど |
| 良い | ミカン・リンゴ・ナシ・モモ・茶・キュウリ・インゲン・トウモロコシなど |
※濡れ性が悪い作物・・・葉の表面に散布した薬液が広がらず、弾かれてしまう性質をもつ作物のこと。
【葉面上の薬滴の形状(イメージ)】
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除草剤に展着剤は?除草剤と展着剤の必要性

除草剤専用の展着剤がありますが、必ずしもすべての除草剤に混合する必要があるわけではありません。製品によっては「展着剤の加用の必要はない」と記載されている場合もあるため、製品ラベルを確認の上、使用してください。
一方で、除草剤によっては展着剤を加えることで、速効性や耐雨性の向上が期待できる組み合わせも存在します。
また、プリグロックスLの場合、使用上の注意事項に「展着剤を加用する場合には、非イオン系展着剤を使用してください。散布液量は雑草の大きさや密度に応じて、適宜増減してください。」と明記されています。このように展着剤を加用することで速効性が上がり、除草効果が安定する場合もあるので事前に製品ラベルで確認して適切に使用しましょう。
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除草剤専用の展着剤ではないスカッシュやアプローチなどの展着剤を添加してもいい?
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展着剤も農薬の一種であるため、使用には農薬登録が必要であり、剤ごとに「適用農薬」「適用作物」「使用量」「使用方法」が細かく定められています。したがって、どの農薬に混用してよいかは製品ごとに異なり、ラベルの確認が不可欠です。質問の「スカッシュ」の登録上の適用農薬に除草剤は含まれていないため、除草剤との混用はできません。一方、「アプローチBI」は殺虫剤・殺菌剤に加えて非選択性除草剤も適用農薬に含まれるため、除草剤と併用することが可能です。ただし、除草剤の効果を十分に発揮させるためには、速効性や難防除雑草への処理効果、耐雨性の向上などを狙った「除草剤専用展着剤」の使用がより適しています。
展着剤にはさまざまな種類があり、どれを選べば良いか悩んでしまうことも多いかと思います。作物や使用目的によって最適な展着剤は異なり、場合によっては展着剤を使用しなくても良いこともあります。選択に迷った際は、ぜひご相談ください。

