大量発生の果樹カメムシの種類と生態!発生予測の方法とは

近年多発するカメムシとその被害

カメムシによる柿の被害

カメムシが大量発生すると、その被害は深刻でニュースに取り上げられるほどです。柑橘類では、果実の落果や腐敗が発生し、柿では変色や陥没、さらには落果が多発するなど深刻な被害を引き起こします。このような被害は収量の減少を招き、果樹におけるカメムシの影響は想像以上に大きく、早期の対策が必要です。

カメムシが大量発生する要因には、気象条件や生態系のバランスなど、さまざまな要素が関係しています。こちらの記事では、果樹カメムシの生態と被害の予測・注意点についてご紹介します。

主な果樹カメムシ

果樹園を加害するカメムシは約30種類を超えますが、被害の大部分は以下のカメムシによるものです。

ツヤアオカメムシ

体長:14〜17mm(成虫)

発生回数:年1 ~ 2回

越冬:成虫態で常緑樹の樹冠内で越冬する

  • 光沢のある鮮やかな緑色
  • 成虫はカンキツ類、モモ、ナシ、カキなどの果実を吸汁加害する
  • 定期的に吸水が必要で寒さに弱い

チャバネアオカメムシ

体長:10~12mm(成虫)

発生回数:年1〜2回がほとんどで最大でも3回

越冬:成虫態で主として落葉下に潜んで越冬する

  • 緑色の体に茶色の羽と黒いお尻
  • 果樹ではミカンのほかカキ、ナシ、モモ、ブドウなど多くの種類を加害するが、厚い果肉が障壁となり、栽培果実ではストロー状の口(口吻)が種子に届かず、いずれの果樹でも幼虫は発育せず、果樹園外で繁殖して成虫となったものが果樹に飛来し加害する。

クサギカメムシ

体長:13~18mm(成虫)

発生回数:年1〜2回

越冬:樹皮の隙間、落葉中、積み重ねた木材、石の割れ目等、物と物の間の狭く暗い場所に潜入して越冬する。また、大きな構造物に集まる習性があり、時として大量の成虫が家屋に押し寄せ問題となることがある。

  • 寒さに強い
  • リンゴ、ナシ、ブドウなどの果実、キリの樹、ダイズでも繁殖がみられる

なぜ果樹園に飛来するの?

カメムシの最大のエサは果実ではなくヒノキやスギの球果(実)の中の「種子」です。

これらが不足してくると離脱して、空腹で果樹園に立ち寄った個体が花や幼果、新梢を吸汁加害します。越冬量が多かった年には、果樹園への訪問も多くなりやすいです。

チャバネアオカメムシの生活環

引用元:果樹カメムシ類生態と防除対策(大阪府)

カメムシの天敵っているの?

【捕食性天敵】クモ類、カマキリ類など

【寄生性天敵】

寄生蜂:寄生蜂はカメムシに卵を産み付け、カメムシの卵の中でハチの幼虫が成長し、内部から捕食します。

寄生バエ:カメムシの成虫の羽根に卵を産み付け、カメムシ体内でハエの幼虫が成長し最終的に死に至らしめます。

病原菌:落ち葉などで越冬する成虫に感染、カメムシは病原菌の菌糸に覆われて死にます。

カメムシ発生予察の判断・予測

カメムシの発生状況については、各都道府県の病害虫防除所が、越冬成虫の密度やフェロモントラップ・ライトトラップによる誘殺数などを調査・分析し、その結果を「発生予察情報」として公表しています。

是非、お住まいの県の病害虫防除所が発表しているカメムシの発生予察を参考にしてください。

発生予察について

カメムシの発生予察は、越冬世代成虫(7月まで)第1世代成虫(8月から)と分けて考える必要があります。

【7月まで】

越冬量の調査によって、おおよその予測ができます。飛来の時期は毎年よく似た時期のため、例年と比べて早いか遅いかを予測することが可能です。さらに、気温の長期予報やライトトラップ、フェロモントラップでの捕獲数を平年の値と比較することで、発生の規模や飛来の時期が通常より早いか遅いかを把握できます。

【8月から】

ヒノキの球果量や、ヒノキ球果に見られる口針鞘の数から、発生状況をおおよそ予測することができます。

8月以降の飛来は、親となる越冬世代とヒノキ・スギの球果量のバランス、需要と供給によって果樹園に飛来するタイミングや被害の程度が変わってきます。

発生量(山で発生した成虫の量)が多いからといって、必ずしも飛来量(果樹園に来る成虫の量)も多くなるとは限らないのです。山での発生量は主にエサの量、つまりヒノキ・スギ球果(チャバネでは特にヒノキ)の結実量によって決まります。

発生予察を確認して対策・防除を!

防除所が発表しているカメムシの発生予察を参考に適切な防除・対策を行ってください。

また、園内でも場所によって飛来状況は大きく異なるため、普段から観察を行い、自分の園における飛来の傾向を把握しておくことも大切です。

カメムシ防除薬剤(殺虫剤)はさまざまなものがございます。時期によってはカメムシ以外の害虫にも対応したい場合があるかと思いますので、薬剤選びにお悩みの方はぜひご相談ください。

防除ポイント

  • 中山間部に近い果樹園や例年飛来量が多いほ場では園内の発生状況に十分に注意し、飛来を確認したら防除しましょう。
  • 果樹カメムシ類は日没前後に活発に飛来するため、薬剤散布は午後から夕刻、または早朝に行うと効果が高くなります。
  • 合成ピレスロイド系(IRACコード3A)の薬剤を連続して散布することで、ハダニ類やカイガラムシ類の発生が多くなる傾向があるので注意してください。
  • 収穫期に防除を行う場合は、収穫前日数に注意してください。

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