農薬が効かない?抵抗性と農薬の種類が分かるRACコード
安定した農作物の収穫を維持するには、病害虫による被害を最小限に抑える必要があります。そのための手段として、殺虫剤や殺菌剤といった農薬が利用されています。
しかし近年、農薬に対して効きにくくなった害虫や病原菌が増加しており、従来の防除手法が十分な効果を発揮しないケースが目立ってきています。その背景には、同じ種類の農薬を繰り返して使用することなどにより、農薬に対して抵抗性を持つ害虫や耐性菌が発生してきたことが一因と考えられています。
いつも使っている農薬が最近効いていない?

農薬をラベル通りに適切に使っているのに、様々な農薬をローテーションしているのに「以前より効き目が弱くなった」と感じることはないでしょうか。
その原因の一つとして考えられるのが、見た目や製品名が違っても、実は“同じ種類(系統)”の農薬を繰り返し使っているケースです。
実はそれ同じ種類(系統)の農薬を使っているかも?

同じ作用機構の農薬を長期間使い続けると、その薬に強い性質をもった害虫や病原菌が生き残りやすくなり、次第に薬の効き目が落ちてしまう可能性があります。これがいわゆる「薬剤抵抗性」の問題で、農薬の効果を長く保つためには無視できない重要なポイントです。
たとえば、次のような農薬を見てみましょう。
- アルバリン顆粒水溶剤:IRACコード4A
- モスピラン顆粒水溶剤:IRACコード4A
- アドマイヤーフロアブル:IRACコード4A
名前もメーカーも違うこれらの農薬ですが、すべて同じ「4A」というコードに分類されており、同じ作用機構(ネオニコチノイド系)を持つ薬剤です。つまり、知らず知らずのうちに「同じ種類の農薬」を使い続けていることになるのです。
薬剤抵抗性が発達する仕組み
ハダニ類やアザミウマ類は、世代交代のサイクルが非常に短いため、使用される薬剤に対して抵抗性が発達しやすいという特徴があります。
薬剤耐性の発現状況は、作物の種類や栽培されている地域、また使用されている農薬の種類や使用頻度によって大きく異なります。そのため、防除にあたっては、地域の情報や作物ごとの特性を考慮し、薬剤のローテーションや作用機作の異なる薬剤の組み合わせなど総合的な防除対策を講じることが重要です。

薬剤抵抗性を防ぐカギ「RACコード」
RACコードは、農薬の「作用機構(どのように効くか)」で分類し、わかりやすく記号で示したコードのことです。それぞれ以下のように分かれています。
- IRACコード:殺虫剤(Insecticide Resistance Action Committee)
- FRACコード:殺菌剤(Fungicide Resistance Action Committee)
- HRACコード:除草剤(Herbicide Resistance Action Committee)
RACコードはどうしたら分かる?どこに書いている?
農薬ラベル・チラシ


※古いパッケージの製品やチラシには、RACコードが記載されていない場合もございます。
農薬データベースを利用
製品のメーカーホームページや「クロップライフジャパン(農薬工業会)」などで確認可能。
(外部リンク:https://www.croplifejapan.org/labo/mechanism.html を参考)
ご注意ください
RACコードは農薬の作用機構を把握するうえで非常に有効な指標ですが、いくつか注意すべき点もあります。
- 日本だけで使用されている農薬の中には、RACコードが決まっていないものがあります。
- 同じRACコードの農薬でも抵抗性や耐性の程度が異なる場合があります。害虫や病原菌の薬剤耐性の程度は作物の種類や地域ごとに異なりますので、実際の薬剤抵抗性対策につきましては地域の農業普及指導センター・病害虫防除所等関係機関などの指導を受けるようにしてください。
- 抵抗性の発達を遅らせることはできても完全に阻止することはできません。
RACコードを活用して正しいローテーション防除を

薬剤耐性のリスクを低減させるためには、同じ作用機構の農薬を連続して使用しないことが重要です。そのためにも、まずは現在使用している農薬のRACコード(作用機構分類)を一度確認し、ローテーション防除の計画を見直しましょう。
最近では、「病害虫防除指針」や各地域の「病害虫注意報」などにもRACコードが記載されているため、これらの情報もあわせて参考にすることで、より効果的で持続可能な防除が可能になります。